昼休みの1冊





「木洩れ日に泳ぐ魚」
同居していた二人が別れて別々の部屋に出ていく最後の夜の心理戦を描いた本。
ところがすべてが想像での展開で、何も確定しなくてそれで話をすすめられても
という感じで、まったく面白くなかった。2017年の最後がこれとは。



「はるなつふゆと七福神」
七福神の中で、ネームバリューの低い寿老人と福禄寿が、職を失ったばかりの
ニートの女の子の家に現れて、自分たちを有名にしてくれと頼む。
「神様の御用人」をもっとゆるくした感じで、のんびり読むにはいい。



「反撃のスイッチ」
働く意欲のない人たちをゴミ呼ばわりしていた会社社長が、娘を誘拐される。
ことごとく反省せず、自分勝手な社長夫婦にイラっとするが、最後まで
展開がよめずまあまあ面白かった。

2017年12月



「決戦!日本海上空」
このシリーズまる3年くらいかかってないか。しかも上巻は今までのおさらいみたいな
感じ。下巻の残り三分の一くらいでようやくイーグル・ラプターと牙の対決。それでも
おもしろいと思えるくらい、ドキドキ感満載。これで今回は終わったんやな?とちょっと
不安を感じさせる終わり方。



「ダブル・フォールト」
新米弁護士が、被告人の娘に目の敵にされながらも真実を追い、でも娘に
加担もしつつ真相にせまっていく。最後あたりがちょっとややこしくて、
こんがらがったけど、実際の法廷はこんなふうに進むのかとリアルに
描かれてて面白かった。

2017年11月



「プロパガンダゲーム」
広告代理店の就活で、学生が政府側とレジスタンス側に分かれて、ネット上で情報を流して
仮想戦争の是非で戦う。発想は面白かったけど、あまり抑揚もなくラストはその終わり方どうなの?
というイマイチな作品。




「ラシトレシピ/麒麟の舌の記憶」
戦時中に満州で、満貫全席を超える料理を作るように言われた料理人と、それを
再現させようとする現代の料理人の話やけど、これがミステリ物。ラストはハッピー
エンドで良かったと思ってたら、もう一つのサプライズ。そこまで絡ませるとは
全く、想像できひんかった。



「ルパンの娘」
家族全員が警察官の長男と、家族全員が泥棒の長女がお互いの職業を知らずに付き合って
いたところに、泥棒一家のおじいさんが殺人事件に巻き込まれる。登場人物がそれぞれに
面白く、プロットも細かくてどんでん返しもあり、そこに恋愛も絡んで、思ったよりはるかに
面白かった。

2017年10月




「神様の御用人7」
シリーズ7作目は、1冊まるごと一つの話で、あの荒ぶる神様の悲しくも会いに溢れた
物語。実際の古事記や日本書紀からも外れたフィクションではあるけど、本当に
こういういきさつだったんじゃないかと思えるほど、いい話になってた。
シリーズの中でも1番好きかも。



「もしも俺たちが天使なら」
詐欺師と元刑事とヒモの3人が、若い娘を助けるために、チームになって活躍する。
「俺たちは天使じゃない」を元に書かれたであろう作品。大がかりなコンゲームで、
途中から先が気になってしょうがない。ラストは、都合のいい展開ではあるけど、
十分楽しめた。



「魔法使いと刑事たちの夏」
魔法近いの家政婦が真犯人を見つけ出し、刑事がアリバイを崩していく倒叙法ミステリ第2弾。
今回の最後で、初めて突発の殺人が起きて、それを犯人がごまかそうとするけど、
意外な盲点が。でもやっぱり計画的殺人を崩していくほうが面白いかな。



「八月十五日に吹く風」
第2次世界大戦時、日本軍が島に取り残された5000人強の兵士を救うために、
無謀と思える状況下で作戦を決行したと言う史実を基づいた小説。
日本軍と言えば、特攻や玉砕などの言葉が思い起こされて、実際にこんな事が
あったなんて、全く知らなかった。戦争の悲惨さを伝える事も大事やけど、
杉原千畝とかこういう話をもっと授業で教えればいいのにと思う。


2017年9月



「ツボ押しの達人」
好きな作家でこのタイトルと絵ヅラ、面白くないわけがないと買った。
思っていた展開とはだいぶん違ったのと、笑えるシーンがちょっと少なかった。
いつも通り楽しいだけではなく、悲しみも含まれてて、まあまあ。



「豆の上で眠る」
初めての湊かなえ作品。これはしんどさがましそうだったのと、失踪した姉が別人
なのではとずっと思ってる妹の心理が面白そうで買ってみた。最後は、そんなこと
あるか?と思いながらも、家族って何かと考えさせらる話。

2017年8月



「探偵が早すぎる」
莫大な遺産をめぐって女子高生が親戚に命を狙われるが、探偵が事件が起こる前に
ふせいでしまうという前代未聞の話し。荒がないかというと、そうでもないけど、
それでも気づきはおもしろかった。後半は一気にすすめたせいでちょっと荒くなったのと
ミステリアスなとこもあって、純粋な推理物ではなかったけど、充分楽しめた。



「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」
正確に言うとVSではないと思うけど、虚実織り交ぜてさも本当にあったかのような
ストーリーになってる。ホームズの有名な話しの一旦もあって、シャーロキアンで
なくても充分面白い。伊藤博文とホームズとニコライをつなげて話を作るなんて
発想がどうやったら出てくるのか。やっぱりストーリテラーとして一流と思う。
娘がホームズ全集を持ってたはずやし、ホームズもちょっと読んでみよかな。



「ドミノ」
多くの人間が東京駅を舞台にして話を展開していく。
最終的に全部がつながると期待してたら、そんな繋がり方?
という感じで、ちょっとがっかり。

2017年7月



「新八犬伝」
昔の人形劇をノベライズしたもの。こんなに話がぽんぽん進んだっけというくらい
展開が早い。こども向けの人形劇やったこともあるやろうけど、もう少し
ふかぼりしてほしいかな。かといって馬琴の原作を読む気は起きない。



「魔法使いは完全犯罪の夢をみるのか?」
家政婦志望の魔法使いとちょっと変な刑事が、コンビで殺人事件を解決していく。
魔法で犯人はわかるものの、証拠が必要でそれを刑事がひねり出していく。
倒除形式で、前に読んだ別のシリーズよりはアリバイを崩すきっかけがしっかり
してるから楽しめた。あと2冊ほど出てるみたいなので、これもまた読んでみよう。

2017年6月




「あぽやん」
空港で働く男のお仕事小説。専門用語が結構出てきて、ちょっとわからんとこもあり、
トラブルが解決できず、飛行機に乗れないなんてものあり、想像しただけでぞっとする。
客としてはありえへんし、職員としたら申し訳なさMAX。実際に働いてる人からすると、
こんなんありえへ〜んていうのもあるのかな。



「愚者のスプーンは曲がる」
超能力者が出てくる話やのに、超能力のシーンがない。能力の面白さもそうやけど、
代償も面白い。どうやったらこんなコンセプトが出てくるのか。中盤までは
おもしろかったけど、終盤は展開が早すぎるのと、頭が悪いからちょっと
ついていけへんかった。



「屋上のテロリスト」
ポツダム宣言を受諾したかった日本が、東と西に分かれているという設定。
そうきたかというのはあれど、予想通りのもあり、帯にあった100回騙されるほどでは
なかった。でもさらっと読めて読後感も悪くはない。

2017年5月



「残業税」
労働者の働きすぎを抑えるために導入された、残業の割合に比例して個人と企業に
税金をかける残業税の話し。もっと笑えるのかと思ったら、税務署員と労基職員が
共同でサービス残業を暴いていく、「マルサの女」みたいな感じ。
過労死も関わって、結構シビアなのもあった。実際に導入しても面白いかも。



「優しい死神の飼い方」
死神が左遷され、犬の姿でホスピスで暮らして、魂が彷徨わないようにする。
最初はハートフルな話かと思いきや、章が進むにつれ関連が見えてきて、結構なミステリやった。
雰囲気はちょっと「神様の御用人」にも似てて、かなり好きな部類。これは手元に置いておきたい1冊。

2017年4月



「大脱走」
ブラック企業で働く主人公に新入社員がつくことになるが、とんでもないやる気のなさで、
主人公が苦労をした末に悪い方向に走る。こんなのが本当にいたらブチ切れるような気もするけど、
まあ小説なのでラストの持っていきかたもアリかな。




「少女キネマ」
浪して上京した大学生が、ある少女と出会って映画を撮ることに。かなりファンタジーな作品やのに、
出てくる登場人物はどれも自分が小学生の頃にいた下宿人みたいなのばっかりで、
なんかちょっと不思議な感じ。ラストもありがちな展開やけど、決して嫌いなストーリーではない。



「旅猫リポート」
これ、ダメ。出てきた猫が、頭と尻尾の一部がブチであとは真っ白のナナという名前。
自分の飼ってた猫が真っ白のナナ。いきなりの出だしで「うぐっ」て。
主人公が自分で飼えなくなるので、昔の友達を訪ねて飼い主を探しにナナと旅をする。
笑えたり微笑ましいシーンもたくさんあるけど、ラストは読んでるのが会社じゃなかったら、
間違いなく泣いてる。有川浩プラス猫なら予想すべきやった。でも買って良かった。



「水鏡推理Y」
シリーズ6作目。今回は面白かった。過労死を防ぐためのシステムを検証する中で、
過去に過労死した公務員を調べると不可解な事が。今までと違って、
研究結果の偽装ではないところで人の思惑が絡んでくる。ラストも想定外で、長編の中では1番。


2017年3月



「終電の神様」
以前に読んだ「D列車でいこう」が面白かったので買ってみたけど、何ということのないストーリーがいくつか。
それぞれが関わりあうわけでもなく、終電と関係ない話もあり、うーむって感じ。



「猿蟹」
老人ホームに入るためのお金を騙し取られた老人のために、詐欺師から奪い
返そうと企むストーリー。テンポも良くて、結構ドキドキした。
ちょっと予想のついた部分もあったけど、まさにコンゲームの面白さがうまく書かれてる。



「ママの狙撃銃」
少女時代アメリカの祖父に育てられ、身を守るために銃の扱いを施された主婦が、
家族のために暗殺に加担する。表紙からもうちょっと明るい感じかと思いきや、
結構ハードな内容。娘のために無茶をするところは、ちょっと痛快。



「家電の神様」
大手家電メーカーをリストラされて、実家の電器屋に戻った息子が従業員と奮闘する。
ありがちな展開で、もう少しひねりというかびっくりするような話が欲しかったかな。



2017年2月



「おれたちに偏差値はない」
現代の高校生が80年代にタイムスリップしただけでなく、自分の父親と
入れ替わった。草食系のはずが、ヤンキー友達と付き合うに連れて変わっていく。
ラストはありがちじゃない終わり方で、こういうやり方もありかと。



「世界地図の下書き」
初朝井リョウ作品。児童施設で暮らす子ども達が、施設を去って行くお姉さんのためにある計画を練る。
登場する小学生の葛藤がなかなか切ないけど、子どもでも、いや子どもだからこその一途な想いが達成できる
ストーリーが気持ちいい。



「福家警部補の挨拶」
往年のコロンボや古畑任三郎と同じ、殺人の様子を先に見せて、いかに追い詰めていくかという展開。
警部補とは思えない小柄な女性のキャラクターはなかなかいいけど、偶然に助けられるシーンもあって、
ちょっと物足りない。古畑のように、犯人あたりを付けるきっかけをもっと描いてくれるといいのに、残念。

2017年1月